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国とアメリカの間の航路のトランシップ貨物量がこの貨物総量の五二・二%を占めていることが注目される。この点に関して、中国を代表するコンテナ船社であるCOSCOが、ポートアイランド第二期の大水深のコンテナ四バース(水深一五メートル)のうち二バースの一九九八年よりの専用使用を決定した事も、神戸港が中期的に見てアジアのハブ港としての機能を継続しうる必要条件を満たしたと評価できよう。
しかしアジアと北米を結ぶ立地上の優位性と優れたハード設備だけでは、神戸港が長期的に見て、アジアのハブ港の一角に食い込み続ける事は難しい。この問題を克服するには、震災によって一気に表面化した神戸港の国際競争力の劣位の原因を着実に取り除かねばならない。それは、二四時間荷役・日曜荷役の実施一港湾料金の見直し、手続きの簡素化・迅速化など、ユーザー志向性を強化した港湾活動の展開である。現在、神戸港に比して四〇フィートコンテナ一個あたりの港湾料金が四〇〜八○%のレベルにあるアジアの諸港湾(シンガポール、香港一高雄、釜山)では、製造業の平均貨金が日本の二五〜三〇%のレベルにある。そのため、アジア諸港との港湾料金の差を埋めるためには、神戸港の荷役の生産性をアップして、港湾料金体系を抜本的に改正する必要がある。それには、震災後の特例として始めた二四時間荷役・日曜荷役を継続し、アジアの諸港並に、設備の稼動日数を年国二六〇日を上回る体制にして、しかも料金を平日の昼間と同じにするのがよい。それでも料金の格差は残るとしても、サービスの質に国際格差があれば競争の舞台に立てないことを認識するべきである。ヨーロッパの港湾調査でも、サービスの質の差を多少の料金格差よりも重視するという報告も見られる。その意味で、手続きの簡素化・迅速化も重要であり、それを促進するためにも、シンガポール並のEDI(電子データ交換)システムを導入する道を早く急ぐ必要があろう。
神戸港の将来像を描く
神戸港の抱える問題は、等しく日本の港湾の直面している課題でもある。その意味で、神戸港には、震災後の復興の過程において、日本の港湾の発展モデルとなることが期待される。すでに世界のコンテナ船企業は、国籍を越えたアライアンス(提携)に向かい、荷主の要望に応えうる国際競争力のある少数の寄港地をグローバルな視座から選択しはじめている。神戸ポートアイランド二期工事による大水深の二バースが、日本(大阪商船三井船舶)・アメリカ(APL)・オランダ(ネドロイド)・香港(OOCL)・マレーシア(MISC)で結成された「ザ・グローバル・アライアンス」の寄港地となったことは、神戸港復興の足掛かりとなるであろう。現在、港湾に求められているのは、国際物流の円滑なノードとしての機能である。そのためにも神戸港は、単に国際物流と国内物流のノードしてのみならず、アジアを巡る国際物流ネットワークの中のノードとしての評価を高める必要があろう。21世紀の神戸港に期待する姿は、港湾を国内としてではなく、国際産業として位置付けて、日本経済のみならず、世界経済の発展に寄与するために、諸々の改革に取り組むベンチャースピリット溢れる企業像である。

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